恋物語。
「……。」
ちょ、ちょっと待って…?さっきまで騒いでいた人が静かなんですけど…っ
井上さんが出て行ったことで沈黙が流れ始め隣の朱里の様子を伺うことにした。
「朱里…?大丈夫~?」
「ん~…」
目を閉じている朱里の身体を揺らすと寝ぼけているような声を出す。
「あぁーあ…もうダメかな?」
「かも…」
純也くんに話しかけられて私は苦笑い。
「それよりさ…井上さんどう?」
「え?どうって…?」
突然、純也くんにそう聞かれても…意味が分からない。
「いいなー…とか思わなかった?」
「ん~…どうかなぁ…まだよく分からないけど…でも素敵な人だな、とは思います」
「そっか。」
純也くんはニコッと微笑んだ。
「実は俺さ…井上さんに憧れてるんだ」
「え…?そうなんですか?」
「うん。あの人は…ほんとに仕事が出来て上司からの信頼も厚くて…もちろん後輩からの信頼もね。それに人気だってある。だから本当に…憧れの存在。」
「へぇ~…」
確かに…そんな雰囲気は最初から漂っていた。
やっぱりそうなんだ、出来る人は違うなぁ…。
「……お待たせ。あれ…?寝ちゃったの?」
ちょうどその時、井上さんが戻ってきて朱里に目をやった。
「みたいっす。まぁ帰りは俺が送りますよ」
「お。頼もしいねー彼氏くん」
「いやいや…」
井上さんにそんなことを言われて純也くんは少し照れているみたいだった。
いいな、そういうの…ちょっと憧れる…。
「…失礼します。特製カクテルをお持ちしました」
「え…?」
“特製カクテル”という名のピンク色をした飲み物を持って現れた店員さんに私は驚く。
誰が…注文したんだろう…??
「あ、ありがとう」
井上さんがそれを受け取ると店員さんは去っていき、それはなぜか…
「え…!?」
私の前へと置かれた。
な、何これ…!?どういうこと…っ!?