ツンデレ社長と小心者のあたしと……3


「終わった?」


「このページで終わりです……ひゃっ」


そう言ったあたしをそのまま自分の方へ引き寄せて、背中からあたしを抑え込む両の手。


「待ちくたびれて、眠くなってきた」


「すみません」


本を閉じたあたしは、そのまま社長の体にすっぽりと包まれる。


服と服がこすれあって鳴る布擦れの音だけが部屋に響いた。


と不意に、後ろから耳に温かいものが触れた。


社長の舌だ。
あたしの耳たぶを一度ぺろりと舐めると、そのまま甘い声で言う。


「シャワー浴びる?それとも仕事終わったから帰る?」


こんなにドキドキさせておいて、こんなに好きにさせておいて……選択肢をあたしに委ねる所が社長らしい。


ずるい……けれど、そんな社長があたしには愛しくてたまらない。


今だってそう。


仕事が終わるまでは、社長は社長のままだった。


結局は優しい。


だから許せてしまう。


不意のキスも……行為も……。
全部がありになってしまうのだ。


黙ったままでいると、今度は耳の中にまで舌が伸び、社長がもう一度あたしに聞いた。


「どっち?」


ぞくりとした感触に呼吸すら忘れてしまいそう。


「……帰ら……なくてもいいですか?」


恥ずかしさでもう限界。


きっとあたしの心臓の音で、考えてる事なんて全部バレてるし、そんなあたしを社長は笑うんだろう。


それでも良かった。


いつまで続くか分からない関係だからこそ……今の瞬間が宝物。


< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop