ツンデレ社長と小心者のあたしと……3
「終わった?」
「このページで終わりです……ひゃっ」
そう言ったあたしをそのまま自分の方へ引き寄せて、背中からあたしを抑え込む両の手。
「待ちくたびれて、眠くなってきた」
「すみません」
本を閉じたあたしは、そのまま社長の体にすっぽりと包まれる。
服と服がこすれあって鳴る布擦れの音だけが部屋に響いた。
と不意に、後ろから耳に温かいものが触れた。
社長の舌だ。
あたしの耳たぶを一度ぺろりと舐めると、そのまま甘い声で言う。
「シャワー浴びる?それとも仕事終わったから帰る?」
こんなにドキドキさせておいて、こんなに好きにさせておいて……選択肢をあたしに委ねる所が社長らしい。
ずるい……けれど、そんな社長があたしには愛しくてたまらない。
今だってそう。
仕事が終わるまでは、社長は社長のままだった。
結局は優しい。
だから許せてしまう。
不意のキスも……行為も……。
全部がありになってしまうのだ。
黙ったままでいると、今度は耳の中にまで舌が伸び、社長がもう一度あたしに聞いた。
「どっち?」
ぞくりとした感触に呼吸すら忘れてしまいそう。
「……帰ら……なくてもいいですか?」
恥ずかしさでもう限界。
きっとあたしの心臓の音で、考えてる事なんて全部バレてるし、そんなあたしを社長は笑うんだろう。
それでも良かった。
いつまで続くか分からない関係だからこそ……今の瞬間が宝物。