ツンデレ社長と小心者のあたしと……3
「読んでけば?」
「でも、もう遅いですし」
「家帰ってから読むんだったら、時間が遅くなるのは一緒だろ」
「それは……」
思ってもみなかった事を言いだされ、一瞬心臓が止まりかける。
社長の目の前で、社長の本を読み、その上書評を書くだなんてこと、想像しただけで緊張しかない。
そんなあたしにお構いなしで、社長はさっさとあたしの手から本を取り上げるとガラス製のテーブルに置いた。
「はい、どーぞ」
ここまでされては断る理由も無く、そっとソファーに腰を落とす。
上質の革が柔らかくお尻を包む感触。
あの日と同じソファーの座っていると、社長に抱かれた時間が嫌でも思い出されてしまう。
いけないいけないと、あたしは頭を振って本を開く。
よこしまな事を考えている場合じゃない。
これは仕事。
ここは自分の家だ、と心に言い聞かせ読書に集中しようとしたものの、あたしの事なんて全く気にせずマイペースな社長がシャワーを浴びはじめる始末。
ふんわりとした泡の香りで、心はかき乱されっぱなし。
2枚くらい壁の向こうでは裸の社長が……なんて考えたら本の内容なんて頭に入るはずもなく……。
近くにいたら、また触れてほしくなる。
こうして家に呼ばれたり、さっきみたいに、
「ここにいれば?」
なんて言われたら、考えないようにしても期待してしまう自分がいる。
降参してしまいたい……でもできない。
どうにもならない気持ちでいると、濡れた髪をタオルで拭きながら社長が戻ってきた。
「どう、終わった?」