謝罪のプライド


 とは言え、今の私はそんなに美乃里と一緒にいるタイミングもなく、話が出来ないまま時は過ぎる。
浩生も忙しくて、かつやに行く話も棚上げ状態だ。

ヘルプデスクは今日も電話が鳴り響き、客先や社内からの揉め事に追われる日々。


「申し訳ありません。調べてから折り返します」


電話を切ってからシステム開発部に電話する。電話だけでは伝えきれなくて、結局書類を印刷して持って行くことになった。

廊下を歩いていると、途中で営業の田中さんとすれ違う。


「よう、新沼ちゃん。この間サンキューね」

「田中さん……。お客様に導入するマシンは決まったんですか?」


浩生が懸念を抱いていたのを思い出して、少し心配になりながら問いかける。


「うん。来週マシンとプログラムと同時導入。お陰でトントン決まったよ」

「そうですか。良かったです」


田中さんはニコニコしている。どうやら取越し苦労だったのかな。
ほっと胸を撫で下ろしてシステム開発部のブースに入る。


「こんにちは。ヘルプデスクの新沼ですけど。教えていただきたいことがあるんですが……」

「あら、新沼さん。久しぶりね」


笑顔で迎えられて、ホッとした気分になった。




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