謝罪のプライド

「新沼さんが教えてくれてから、私、今自分が求められてることがわかってきたっていうか。仕事楽しいって思えるようになったんです。そうしたら、九坂さんも優しくなったっていうか。……ギャップ萌えっていうんですか? 私、本気で九坂さんのこと好きになっちゃったかも」

「はぁ?」


ちょ、ちょっと待った。
ダメだって、ダメ。


「だから、頑張ります。応援してくださいね、新沼さん」

「えっ、ちょっ、やっ」

「あ。九坂さんだ。九坂さぁーん、おはようございますー!」


確かに数メートル先に浩生がいる。目ざといな。あの色のスーツの人間なんてたくさんいるわよ。

私に一緒に行きましょうーって言ったはずの美乃里は、そのまま駆け出して行って浩生の隣に収まった。

浩生はそっけなく……でもなく普通に美乃里と並んで話している。
私には全然気づいていないみたい。

つか、本気って何。
ダメだっつの。浩生は売約済みだよ。

……でもダメだというタイミングを逃してしまった。
美乃里が浩生にフラれるのを待つ……なんてそれもどうなの?

もし美乃里が本気なら、私から浩生と付き合ってることを伝えないと、彼女を傷つけてしまうんじゃない?



< 103 / 218 >

この作品をシェア

pagetop