謝罪のプライド

「……うふふ」

「どうしたの、急に笑い出して」


気持ち悪いな。
いや、顔がいいから実際は可愛く見えるけども。


「えー、思い出し笑いです。あーあ、技術部が楽しかったのになぁ」

「そういえば、送別会してもらったんだってね。楽しかった?」

「ええもう。うふふ、実はですねぇ」


くすくす笑いながら、美乃里は私の耳元に口を近づけた。


「ホテル行っちゃったんです。九坂さんと」


息が止まった。
苦しくて、何とかしようと思うと小さな咳がやっとのことででる。


「……え?」

「内緒ですよー」


……嘘。嘘だよ。
だって浩生は言ったもん。
心配するようなことは何もないって。


「彼女さんがいるみたいだったんで、私、ちょっとムキになっちゃって……」


美乃里が照れたように頬を両手で抑えた時、沢木さんが顔を出した。


「ごめん、坂巻さん戻れる? 塚原、外出するからついて来いって」

「あ、はーい。ごめんなさい、新沼さん。じゃあまた今度ゆっくり話しましょー」


空気を読まない女は私の驚愕の表情にも気づかないらしい。ニコニコと自分の言いたいことだけ言っていなくなってしまった。

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