謝罪のプライド


「よう、初音」

「きゃあ」


背中をポンと叩かれて、心底びっくりした。

振り向いた先にいたのは浩生だ。
私のあまりの驚きように逆に驚いたらしい。


「先に入ってりゃ良かったのに。待たせたかと思ったが、初音も遅かったんだな。ちょうど良かった」

「あ、あの」

「どうした? 入るぞ」


私を追い抜かして、かつやの扉に手をかける。

浩生は普通だ。
だったらいっそ私も普通にして、美乃里の話なんか聞かなかったことにするのも手だ。
……だとは思うけど、足が動かない。

なかなか動かない私を、浩生は訝しげに振り返る。


「初音?」

「……坂巻さんと、ホテルに行ったの?」


凄く嫌な声が出た。
不信が表に現れたようなざらついた声。

浩生は眉根を寄せて私のことをじっと見る。


「誰が言ってた?」

「本人が」


そう言うと、眉を潜めて大きなため息をつく。

何、その態度。
内緒にしろよとか、そういう口裏でも合わせてた?



「誤解すんなよ。行ったって言っても……」

「ホントに行ったのね?」


浩生の説明を待てずに声が出た。


「私に、心配するようなことないって言ってたくせに、ホントはそんなことしてたの?」

「おい、初音」
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