謝罪のプライド

待ち合わせはお店の前。
最寄り駅の近くなので、帰社時間とかぶると知り合いと出くわしそうで、待ち合わせ時間は少し遅目に設定した。

 お店の近くまで行くと、ボーダーのTシャツの上に白いシャツを羽織った数家くんを発見する。
今日は休みのはずなのに、癖なのか『いらっしゃいませ』を連呼している。
思わず笑って見ていたら、数家くんは私に気づいて近寄ってきた。


「待ってたよ、新沼さん」

「数家くん、せっかくのお休みなのに全然休んでないじゃん」

「そんなことないよ。なかなか店に入る前のお客の顔を見れることってないし楽しい」

「仕事が趣味なんだね」

「そうそう。流石新沼さん、上手いこと言うね」


何の気なく褒めてくれているのだろうけど、妙に過敏反応してしまう。


「さ、入って。新沼さん。今日はとびきり美味しい料理をごちそうするよ」


素敵スマイルで数家くんが言う。

爽やかだなぁ。
あまりにもサラリとし過ぎてて告白されてるのかも、なんて疑念はただの自意識過剰な思い込みなのではと思ってしまう。
どこまで本気と捉えればいいのかさっぱりだ。
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