謝罪のプライド

「私が謝って直るなら幾らでも謝ります。でも、謝っても直らないでしょう? だったら他にできることがあるはずです」


言い切って不意に脳裏に浩生が映る。

浩生はいつもこんなふうに考えていたのかな。
謝るよりも先にやることがあると思うから謝らなかったのかしら。


『でもさ、新沼ちゃん』

「とにかく一度切りますよ」


グチグチと続きそうな田中さんの声を無視して受話器を置き、内線で技術部にかける。
朝イチだからおそらく皆予定が詰まっている。

誰でもいいから、とにかく早く繋がって。

祈るように待っていると、八コール目で繋がった。


『はい、技術部』


体が震えた。
よりによって、このタイミングで浩生の声。

まだちゃんと話が出来てないのに、仕事で先に話さなきゃいけなくなるとは。


「あ、あの」

『初音か?』


確かに私だけど。
そんないつもと変わらない声で呼ばないでよ。胸が苦しくなる。


「あの、今営業の田中さんが客先でトラブってて。誰か応援に行けそうな人って居る?」

『今からか? すぐは無理だな。俺もこれから一軒入ってるし、他の奴らもさっきでてったからな』

「……そう」


どうしよう。
でも、何とかしなきゃ。

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