謝罪のプライド

『ヤバい感じか?』

「私が田中さんに提案したマシンがサーバーダウンしたらしくて。ほら、最近導入したやつ」

『あれか。……でも、マシンスペックはそんなに悪くなかったけどな』


しばらくの沈黙。
技術部がダメならどの部署が対応できるかな。
他部署でも元技術部って人はいるからなんとかなるはず……だけど。

私が知る限り、この場面で一番的確に状況を判断してお客様を安心させられるのは、……浩生しかいない。
私は受話器をギュッと握りしめた。

いろいろあって、きまずくて、どう伝えたらいいか分からないけど。
仕事において誰よりも信頼できるのは浩生しかいなくて。


『ん?』

「……お願い、助けて」


祈るような声が出た。

顔が熱くなる。
どうしてこんな甘えた声を、仕事中に出してしまうんだ私。
プライベートではこんなに上手く言えないくせに。

恥ずかしさで死んでしまいたい気持ちになっている私に、電話の向こうの彼は小さく笑った。
そして、低く落ち着いた声が返ってくる。


『分かった。任せろ。田中ってことは東峰ロジスティックだろ?』

「……いいの?」

『安心しろ』


心臓が大きく揺れる。
一言で、全身から力が抜けていくみたい。

そのまま電話は切れ、私は呆然とした気持ちでツーツーとなる電子音を聞いていた。



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