謝罪のプライド

数家くんは、私達を四人がけのテーブルに案内して、今日のおすすめ品の説明をしようとしてくれたけれど、
浩生は仏頂面のまま、「ビール二つ」と彼を追い払うように言った。

数家くんは苦笑して立ち去り、気を使ったのかその後に注文を取りに来てくれたのは、別の店員さんだった。

浩生は最初こそ仏頂面だったけれど、鍋自体は気に入っているのだろう。
私がよそるがままにどんどん箸を進めていく。


「浩生が威嚇するから全然話せないじゃん」

「話すこともねぇだろ」

「色々面倒かけましたって言いに来たのに!」


そうだよ。目的が全然達成出来ないじゃないのよ。

仕方なく、途中トイレに行く時に、数家くんを呼び止める。
するとこっそりと耳打ちされた。


「仲直りしたんだね、良かった」

「うん。ありがとうね、数家くん。お礼言いたくて来たの。……その、来るの失礼かなって思ったりもしたんだけど」

「ここは飲食店だよ。お客さんが来てくれて嫌なわけ無いじゃないか。……それに、彼と二人でいる新沼さんが見れたから諦めもつくって感じだしね」

「え?」

「ビール、確認もしなかった」

「あ、うん」

「聞かなくても分かるくらい、通じあってるってことでしょ」


数家くんが小さくウィンクをする。

私の家の冷蔵庫にはいつもビール、お店で飲むときもまずはビール。
浩生はもう、それを当たり前として認識してくれている。

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