謝罪のプライド
「……ありがとうね。数家くん」
「お礼言われることは何も? 喧嘩したり、別れたくなったらいつでもお待ちしてます」
しれっと言って彼は客席へと向かっていった。
私はトイレを済ませて彼のもとに帰って、美味しい鍋に舌鼓を打つ。
「何話してたんだ?」
見られていたのか。
浩生は眉を潜めたままビールを一気に煽る。
「ビールの話してた。浩生が私に確認も無く頼んでたって」
「……違うものが良かったのか?」
「ううん。ビールが好き。鍋にもぴったり合うし」
浩生は私の反応に少し戸惑っているのか、ずっと視線を逸らさない。
「浩生は私の事、分かってくれてるんだなって嬉しかった」
素直にそう告げると、彼は息を吐きながら目を伏せる。
「……あの男。数家って言ったか? 食えない男だよな」
「そう」
「ヘラヘラしてるだけじゃなくて度胸もある。……俺、前に一度話したことがあるんだ」
「……うん」
私が泣いて、数家くんが慰めてくれたあの日か。
「初めて、初音にはこういうヤツのほうがいいのかなって思った」
これは弱音か?
だとしたらものすごく貴重ですけど。
「あいつならお前を不安にさせることはないだろう」
そうだね。
数家くんはすぐ謝ってくれるし、すぐ言葉にしてくれるし、一緒にいても凄く楽しい。