謝罪のプライド

 もはや怒りで正しい状況説明ができなくなっているお客様から、なんとか症状を聞き出す。
どうやら単純に初期不良らしい。とすれば部品交換か引取修理だ。多少なり知識がある人間なら簡単にできる部品交換なので、こちらのほうが早いか。


「お急ぎでしたら、すぐに代替部品の発送の手続きを取らせていただきます。交換方法も記載してございますので」

『ホントに詫びる気あるの? 発送ってこっちに部品交換させる気? 修理しに来ればいいじゃん』

「でしたら、一度マシンをこちらでお預かりしてもよろしいですか? 配送業者が回収に伺いますので」

『そしたら日数かかるでしょう。いいから誰か派遣しろよ。急いでるんだからさ』


だから。
急いでるって言うから部品送りますって言ってんじゃないのよ。

毒づいてやりたい気持ちを押さえて、私は一度唾を飲み込み平静な声を保つ。


「大変申し訳ありませんが、サービスマン派遣となりますと有料になります」

『はぁ? そっちが悪いんでしょうに。どうなってんのアンタの会社」

「お客様にご不便を大変申し訳なく思っております。マシンお預かりで最速で対応させていただきますので」

『それにしたって四日位かかるでしょう。ああ、もういいよ。部品送って』

「はい、ではすぐに手配致します。ご迷惑をお掛けして申し訳あリませんでした」


相手に見えてるわけでも無いのに本当に頭を下げてしまうのは、日本人特有の癖なのかもしれない。
とりあえず収まりそうかなと安堵した途端に、お客様からは冷たい声。


『今度買い換える時は絶対あんたんとこじゃ買わないから』


その一言、言う必要ある?
思わず電話を睨んでしまう。
そのうちに荒っぽい音で電話は切れた。

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