謝罪のプライド


そしてその女は翌週やって来た。


「新沼初音です。よろしくお願いします」


きっちりスーツを着こなし、髪もショートボブというのかこざっぱりした感じの清潔感だけはある女だった。
背は女にしては高めで、背筋がピンと伸びている。してないわけじゃないんだろうが、化粧っ気も薄い。

いわゆる、女扱いのキライな女かな、と当たりをつける。


実際、初音はそんなような女だった。
男みたいに気が強くて、言われたことはすぐにこなす。

しかし、キビキビしている態度とは反対に、内面では勝手になんでも背負い込んでしまうようだ。
テキストを見てため息をついたかと思うと、頭を振ってまたペンを握る。自分にイライラしているのか、口元はずっと真一文字だ。

なんでこいつこんなに切羽づまってんのって感じ。


初音は顔に出るから分かりやすい。

初見の俺の印象はおそらく“嫌なやつ”だったのだろう。
明らかに愛想が足りないし、何かにつけ不満そうな顔をしている。

出先に連れて行っても、何も言わない俺にイライラしているようだった。
いつも思い切り不機嫌な視線を背中に感じる。


でもな、お前だって俺を苛立たせることがあるんだぜ?

そのスカート。
ちゃんとしてるつもりだろうが、CEの仕事には向かない。
指摘してやったら、どんな顔をするだろう。

意地悪くそう思って、よりによって客先で指摘してやった。
俺に食い下がってくる初音に、なぜだかムカついて。


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