謝罪のプライド


「ええええええー!」

「ちょ、初音! 注目浴びてる」


ちょうどその時、数家くんが注文の鍋を持ってやってきた。


「失礼します。火、つけますね」


鍋を乗せ、コンロを操作する。
その間、真っ赤になって口を抑えた私を見てくすりと笑った。


「こちら取り皿になります。ごゆっくり」


愛想よく去っていく彼が視界から消えた頃、亜結が私を小突く。


「ほらぁ、初音がでっかい声出すから。あの店員さん笑ってたよ」

「いや、それはほら、……あれ、数家くんだよ」

「は?」


ああ、折角のサプライズをなんて呆気無くバラす羽目になったんだろう。
でも、びっくりした。亜結の話に驚きすぎて演出も何も忘れちゃったよ。


「数家くんって誰だっけ」


亜結はまだ思いつかないのか眉を寄せている。


「高二の時にさ、目立たない男の子居たじゃん。数家光流くん」

「あ、ああ! 居たね。名前みたいな苗字の子。……って、今のがそれ? ウッソだ。あんなに爽やかならもっと記憶に残ってるよ」

「だから。私もびっくりしたんだって!」


信じられないとでもいうように、亜結は何度も数家くんの消えた方向を見た。

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