謝罪のプライド

はあ、と一度呼吸を整えて亜結は魅惑的に笑った。

「で、なんとなく押し切られて」

「亜結がぁ?」

「……まあ、慌てた顔が可愛かったからってのもあるかな。年上だけどね」


にっこり笑うその頬に軽く赤みがさしている。幸せのにじみ出ているような笑顔。
もしかしたら、亜結も一目惚れに近かったのかもしれない。


「でもすごいね。すぐ結婚って話になるなんて」

「味噌汁にやられたみたいよ。男は胃袋を掴めってホントね」

「それを出会った初日にやっちゃう亜結はすごいよ」

「なによ。初音はどうなの? 胃袋掴めてる? “謝らない男”の」


不意に話題を振られて言葉が出ない。

浩生との付き合いは順調だ。小さなケンカはたくさんしているけど(と言うよりは私は勝手に拗ねてるだけだけど)大きな揉め事もなく二年。

でも逆に言えば、何も変わらない二年でもある。
“結婚”の二文字は私達の間では話題にもならない。


「結婚とかの話にはならないんだ?」


私の顔色を伺うように問いかけてくる。
興味半分、心配半分っていうところだろう。



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