謝罪のプライド


「彼もすっごく重たかったらしくてさ。ふーってすっごい長いため息ついてるから、お茶でも入れてやろうとしたらよ」

「うん」

「寝てた」

「は?」

「次の瞬間寝てたのよ。いびきもかいてさ。もうキレそうになったけど、深夜だし騒いだって仕方ないじゃん。こっちは目ぇ覚めちゃったし。仕方なく男二人は床に転がして、朝食の準備したわけ」

「偉いな、亜結」

「ま、他にすることも無いし? その状況で寝れるほど神経太くないのよ」


確かに、狭いアパートで男が床に二人。
兄貴がいるなら襲われる心配は無いとはいえ、とてもじゃないけど落ち着かない。


「時間たっぷりあったから、着替えしてメイクもして、もう非の付け所無いくらい完璧な私を演出してみたわけ。もう嫌味な程にね。そして目覚めた男に味噌汁を出したら」

「出したら?」

「イチコロだったよ。あははは」


亜結は楽しそうに大笑いをした。目にうっすら涙を浮かべるほどに。


「もうね。目を開けた瞬間にアワアワしたかと思ったら、ポーッとなって。そこからは事情聴取みたいに、付き合ってる男はいるのかとか自分のことをどう思うのとか」

「アンタ散々けなしてそうだけど」

「当たり前じゃん。初対面の女の家で寝こけるってどうなのよ。まあ兄貴を運んでもらった恩があるから追い出さないけど?」
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