謝罪のプライド

『でも折角なら最新機種でいきたいだろ』

「んー、要件を満たせるなら最新機種じゃないほうがお安く提案出来ますよね。少なくともお客様に双方を提示したほうが親切かなと思います」

『そうかぁ。システムの方に聞いてみるよ。どのくらいのスペックがあればいいかとか』

「ええ、それがいいと思います」

『新沼ちゃん、ありがとね』

大したことは出来なくても、こうしてお礼を言われると嬉しい。

実際、毎日仕事が楽しいなんて人は少数なんだろうと思う。辛くって嫌なことも一杯で。それでも楽しいとか好きだと思える瞬間があってここにいる。正の感情と負の感情を比べたら、私は正の感情の方が強い気がする。どんなに嫌だったことも、吹き飛ばすことができるんだもの。

恋愛もそうかもね、なんて思う。
浩生の嫌なところも、好きって感情が全て押し流してしまう。
逆に、彼が私にそう感じることがあるんだろうか。

いつも手元に置いてある、開きじわがたくさんついたテキストを見ながら、彼のことを考える。

浩生。
私はあなたに、ちゃんと認められてる?
私が感じてる十分の一でもいいから、あなたにそんな風に思われたい。

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