謝罪のプライド
本日の報告書を書き終え、部長に提出して荷物をまとめる。
「お疲れ様でした」
「おう、お疲れー」
ヘルプデスクは、残業自体は少ない。基本は受付時間が決まっているからだ。もちろん、時間外にかかってくることもあるし、その場合は対応もするけれど。
体力的にも余裕があるし、夕飯も手作り出来そうだ。
そう思った私は、廊下でメールをしたためる。
【早く仕事が終わったので、夕飯作るんだけど。一人分だけだと余るから】
これなら押し付けがましくないかな。
あ、でも、帰りが遅いの気にしてるんだっけ。
【どれだけ遅くなっても大丈夫】
その一文を追加して送信ボタンを押そうとしたまさにその時、きゃっきゃと弾むような明るい声が私の耳に届いた。
「ホントですか? 嬉しい」
大きな体の前で、行く手を塞ぐように飛び跳ねる小柄な女性。後ろ姿だけど声でわかる。アレは美乃里だ。
そしてその相手をしているのは浩生。
何かの報告書を手に持って、彼女に話しかけている。
その目は優しく、口元はゆるく上向きに笑みの形をしていた。