謝罪のプライド

ふ、と笑う気配がして顔をあげると、数家くんが少し離れた位置でゆるい笑みを浮かべたまま私を見ている。

「……ごめん」

「え?」

なんで謝る?

「なんか俺、困らせてるみたいだから」

そう言って寂しそうに笑う。

違う、違うよ。
今迷惑をかけているのはむしろ私で、謝らなきゃならないのはこっちの方。


「違う、私のほうが悪いの。あのね……」

「うん?」

「さっきのテーブルの男の人は、……私の彼氏で」

「うん」


大きく反応されるわけでもない穏やかな相槌に、私の舌は滑らかに動き出す。
気がつけば、微笑んだまま頷く彼に私は全部話してしまっていた。

彼とは二年ほど付き合っていること。

さっき一緒だった若い女の子は彼のもとで指導を受けていること。

自分が彼女に、女としての劣等感を感じていること。

ダメだと思うのにヤキモチが止まらないこと。

謝らない彼に対しても、不満が膨れ上がっていること。

そして、先が見えないことに不安を抱いていること。

自分でもびっくりするくらいに、勢い良く本音を吐き出してしまった。


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