謝罪のプライド

「数家くんって凄いね。店員歴長いの?」

「え? そうですね。高卒から働いてるから。かれこれ九年かな。最近はね、一応フロアマネージャーなんて肩書を頂いてます」

「すごーい! でもさ、今お店じゃないし。敬語じゃなくていいよ、元同級生だしさ」

「そう? じゃあお言葉に甘えて」


声の質がガラリと変わる。朗らかで親しみやすくなった。
やっぱり敬語で話されるとちょっと構えちゃうもんなぁ。

数家くんは、ちらりと私を見ると恐る恐ると言った調子で口を開く。


「聞いても……いいのかな。お連れの方じゃないお客様は、会社の同僚?」

「え? う、うん。まあね」

「会いたくない?」

「いや、うーん、まあ」

「彼氏……とかかな?」


じわりじわりと核心に近づいてくるな。

でもあの二人のことは今は考えたくない。

考えるだけで胸がモヤモヤするし、ちょっと、……自分でも予想外なほどショックを受けてる。
気を緩めたら泣いてしまいそうで。

でも、色々気を回してくれた数家くんの質問に答えないのも失礼だなとは思う。

八方塞がりだ。
私は自然に唇をかみしめていた。


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