謝罪のプライド
「昨日出かけてたのか?」
「え? あ、うん。つか、ちゃんと私言ったじゃない。亜結の婚約者と会うって」
「ああ、そういえば聞いたな。昨日だったのか。でも、そいつがお前に電話してくるのっておかしくねぇ?」
浩生は亜結の婚約者からの電話だと思い込んだらしい。
「違うよ、婚約者さんとは別の人。行ったお店の店員さんが元同級生だったの。久しぶりに会ったからなんか会話が弾んだだけ」
「あっそ」
聞いたくせにその返事はないでしょう。
「優しそうな人だったよ、清水さん……あ、亜結の婚約者ね?」
「へぇ」
「亜結の事が好きでたまらないみたい。……ねぇ」
そっけないけれど返事はしてくれる。
今日は話を聞く気があるみたいだ。これはチャンスじゃない?
「浩生は……どう思ってるの?」
「なにを?」
「け、結婚……とか」
ついに聞けた。
ドキドキが激しすぎて苦しくなる。
浩生の顔を見ていられない。
「あー」
浩生は顎に手を添える仕草をした。その沈黙の間、心臓の爆音が止まらない。
「まだ考えてねーかな」
サラリと言われて、胸の奥がいっぺんで真っ暗になった。
胸にぽっかり穴があいたというか、ブラックホール出現というか。