謝罪のプライド
「おい、初音。……あ、電話中か」
ズカズカ上がり込んできた浩生は、私を一瞥すると隣に座り込む。
ちょ、なんでこんな近くに。
別に悪いことをしてるわけでもないのに、変な罪悪感に襲われる。
「ご、ごめん。そろそろ切るわ。またお店行くね」
急いで話をまとめようとすると、電話越しの声のトーンは下がった……ような気がする。
『うん……。なんかごめんね。変な話して』
「ううん、こっちこそ。昨日変なこと話しちゃったし。おあいこ」
『そうだね。また何かあったらいつでも、話し相手になるよ』
あ、ちょっとキュン。
浩生から聞けない言葉なだけに響いた。
それがまた罪悪感に拍車をかけて、胸が苦しくなる。
「あ、ありがとう。じゃあね」
『またね』
ツーツーという無機質な電子音に変わってほっとする。
気がついたら三十分以上話していた。
浩生となんて電話なら数分で終わっちゃうのに。
話しやすいのは、彼もすぐごめんって言ってくれるからかしら。
顔をあげると、浩生は私をじっと見ている。
「誰と電話?」
「え? えっと、高校の時の同級生」
私は笑ってごまかした。
でも、嘘は言ってないよね。
その相手が男の人ってのを言ってないだけだよ。