桜雨、ふわり。
森崎くんが好き。
その密やかな恋心は、彼と過ごす平穏な日々の中で少しずつ育っていった。
日々は流れ、季節は秋を迎えようとしていた。
青々と茂っていた木々は、いつの間にか赤や黄色、オレンジ色にその装いを変え。
肌を撫でる風にもどこか冬の気配さえ感じ始めた、ある朝。
澄んだ青空の下。
下駄箱で靴を履きかえていると、たくさんの生徒の中から、まだ眠そうな森崎くんの姿を見つけた。
森崎くんっ!
これは、すごく珍しい事。
だって森崎くんは、いつもギリギリに登校してたから。
だから、教室の窓から彼の姿を見つける事はあっても、こうして同じ時間に会う事はなかったんだ。
やったぁ!朝から会えちゃった。
相変わらずお昼になれば「森崎探し」をしていたあたし。
きっと今、あたしの周りにはキラキラと花がまってるハズ。
それに、シッポフリフリ。
やっと飼い主に会えた、ワンコそのもの。
「森崎くー……」
思わず駆け寄ろうとして、でもすぐにこの足は止まってしまった。
一歩、また一歩と力をなくし立ち止まったあたしに、気付くわけもなく森崎くんは歩いて行ってしまった。