王子様なDarling
「私はアイコが泣いてるのを沢山そばで見てた。紹介したのは私だから私の責任だって・・・」
香奈子さんの紹介・・・。
「だから絶対に許せない。だけど1番悪いのは幹夫だし、こんな所でイジメみたいなこと私だってしたくないから」
「今言った事、考えて・・・別れろって言ってる訳じゃないの。ただアイコの存在を無いものとして欲しくなかった。それだけだから」
「はい・・・」
香奈子さんの気持ちは痛い程伝わってきた。
香奈子さんは背を向けると誰かに電話をし始めた。
その相手がグッチ君で、帰りたいから送ってと言う電話だと知ったのは先輩と合流した後だった。
どうやって先輩の元へ戻ったのかはあんまり記憶に無い。
頭の中にグルグルと色んな考えがあったから。
悲しかった。
先輩に嘘をつかれていた気がして。
先輩に裏切られたような気がして。
先輩の事を信じてたの。
先輩は私だけを見ていてくれたって。
なのに・・・あの時彼女がいたなんて。
もしかしたら今だってアイコさんを忘れてないのかもって・・・。
「ミーコ、疲れたのか?」
グッタリと歩く私を見て先輩が声をかけてくれた。
私の荷物を持ってくれようと、私の手に触れた。
「やっ!!」
咄嗟に振り払ってしまった自分にもすごくビックリしたけど、一番驚いていたのは先輩だった。
「・・・っ」
今は先輩と触れ合いたくない。
喋りたくない。
顔を見たくない・・・。
張り裂けそうな胸の痛みが、先輩に移ってしまえばいいと・・・
すごくひどい考えが頭を埋め尽くしていた。