深海魚Lover
呼び慣れているあだ名のはずがこの時、一瞬にして友達色が濃くなったように感じた私の胸はズキリと痛み出す。

たかが呼び名、されど……二人の距離、親密度は変わる。

貴方にずっと芽衣子と名を呼ばれ続けるには、どれだけの時が必要なのだろう?

『絢……』

首を左右に振った私は立ち上がると、Vネックカーデガンを羽織りながら玄関へと赴く京次さんの後をついて行く。

「ケイジさん、やっぱり私も行きます」

「ああ、俺の傍に居ろよ」

「はい」

点された玄関の明かり、引き戸の向こうには薄らとシルエット。

訪問者は遠慮がちに話す。

「アニキ、夜分遅くにすみません」

「ツルか、どうした?」

ガラガラガラと開かれた引き戸。

「車、貸してもらえますか
 イズモのアニキを迎えに……
 
 あっ、メイちゃん、遅くにごめんね」

「いいえ」

「でっ、ツル
 出雲から連絡があったのか?」
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