深海魚Lover
「ほらっ、早くしないと
 時間は止まっちゃくれないぜ」

そして貴方は、一度だけ悪戯にウインクをしてみせた。

私の胸はキュンと高鳴る。

「はい」

差し出された貴方の手に触れた私の手。

私達は手を繋ぎ、愛の巣へ。


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『イズモ、今帰ったぞぉ~

 イズモ、どこにいる?

 イズモ、隠れていないで出て来なさい

 イズモ、これは命令だ早くしないか!

 早くしろっ!!』

恐怖でしかない暗闇の中で感じるほんのちょっぴりの温かさ。

それがあるのとないのとでは大いに違う。

この手に感じる、絢の手の温もり。

幼い俺は望む。

ここに居たいけれど、ここに居たくない。

ここには、居られない……

『……組が欲しいならおまえにやるよ』

夜の中を居場所を求め彷徨い続けた結果、俺はある場所に辿り着いたはずだった。

幼い頃、ひょんなことから住むことになった安らぎの場所。
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