深海魚Lover
「イズモのアニキ

 えっと、これには、そのぅ……」

「帰れって言っただろうが今まで何処
 ほっつきまわってたんだ」

「アニキのことが心配で」

「まあ、いい、ちょうど帰るところだ
 送ってくれ」

「はい」

支払いを済ませた出雲を呼び止めるママの声にも振り返ることはなく、外へと繋がる扉を開く出雲。

店の外、出雲は辺りを見渡す。

「ツル、用心しろよ」

「何にですか?」

「近くに峰のおやっさんがいるはずだ
 
 見つかったら面倒だ」

襟を立てて、口元を隠す出雲。

「どうして、また……」

「イズモ!

 イズモでしょう、待って」

その声は店のあるこちら側へと急ぎ足で歩いて来る、安寿の声。

「アニキ、呼んでますよ」

「いいから行くぞ

 車、どこに停めてある」

「すぐそこっすよ」

「イズモ、ねえ待って」

呼びかける声に歩む足を止めることなく、充と共に駐車場へと向かう出雲の腕に触れる手。
< 250 / 410 >

この作品をシェア

pagetop