深海魚Lover
そう、いつもならば、私が描いた絵を見た出雲さんの感想はとても気になるはず

だけど、今の私、心ここにあらずで……

貴方はとても優しく『好きだ』と言葉にしてくれたのに、気にもならなくて

そう、さっきの出来事同様に何てことなくスルー、知らん振りしちゃう始末で……


その時だった!

----ガラガラガラと、引き戸を思いっきり強く開けた音が響く。


玄関に置かれた見覚えのある靴を見つめる視線。

その隣に靴を脱いだ客人は家の中へと入ってくる。


「アニキ、やっぱりここっすか?

 おじゃましま~す

 単独行動はあれほどまでに
 やめてくださいと話してますよね?

 困ったなぁ、まったく
 怒られんの、俺っすよ
 いい加減にして……

 あれっ、あれれ

 ジュンボウどうした
 病気か何か?」

「ツル、人ん家で
 デカい声出してんじゃねえぞ

 うるせぇんだよ」

「あっ、すいません

 ジュンボウ、ごめんね

 ……」


時は過ぎ----


迎えに来た充の運転する車に乗り込んだ出雲は、黙ったまま考えている。

鼻につく新車の匂いも、今はさほど気にならない。


別れ際の芽衣子の無理して見せた微笑みが、出雲の頭の中を占領する。
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