深海魚Lover
電気の消された部屋----

見てもいないテレビの明かりの元で、缶ビールを飲みながら電話で誰かと話す声。


「……しかたねえだろう

 ガキにとっては、親の仇だろうが
 あのまま見殺しにできるかよ

 誰か迎えのもんを寄こすか
 奴が娑婆に出て来るまで
 俺が面倒みるつもりだ」

「そんな無茶なっ!」


通話相手の大きな声に、耳から受話器を遠ざける男。



扉を開けると、三つ並んで敷かれた布団。

眠る小さな頭が三つ。


額に絆創膏を貼って眠るのは、さっきの威勢のいいガキ。

その隣、ピッタリと彼にくっついて眠るのは、まだ幼い少女。


一番奥、自分の寝床へと向かう大きな足が踏んだ布団の端。


「キャンッ」

「おっと、すまねえ

 おまえ、そんなとこに居たの

 こっち来るか」


老犬は男の誘いをフンと突っぱねて、布団から出てる女の子の足元で丸くなって眠る。


「かわいげねえやつ」


自分の布団の隣に敷かれた花柄の布団。

その布団を深く被って眠る息子、京次の頭を優しく撫でる大きな手。
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