深海魚Lover
アイツに殴られた熱い頬に、母の冷たい手が触れる。

「どうして、父さんは俺にばっかり……」

「それはね、イズモ

 もともとは、イズモが未熟児で産まれて
 来たことが原因なのよ

 7カ月で産まれた貴方は他の子よりも
 うーんと小さくて、お父さん
 びっくりしたのよ

 それじゃいけないって思ってね」

他の子よりも劣る俺がどうしても許せない父。

年老いてやっとできた子供にかける情熱は凄まじかった、とでも言うのだろうか?

あれが愛だとは、俺にはとても思えない。
 

本当の俺は、祖父とも思えるほどに母と年の離れた父親の事を好きではない。

どうして父よりもうーんと若かった母の方が先に亡くなったのか?

それは多分、ストレスのせいだろう。

「イズモ、どこだ~

 イズモ、おまえは大事な大事な
 跡取り息子だからな

 ガハハハハッ」

大きな手が俺の頭を撫でる。

大きな手が俺の頬を殴る。

大きな手が母を、絢を傷つける。
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