深海魚Lover
『夜は寝てればいいだけのことさ』

「何を言ってもああで本当 
 困ったもんだぜ

 それよりも、出雲

 どうした浮かない顔して
 何かあったのか?」

「いやっ、何でもない」

「そうか」

居間へと戻ろうとした京次は振り返る。

玄関先には靴を履いたまま立つ、出雲。

「おいっ、何してる

 早く中に入れよ」

「ああ」


俺達はここから出て行く事を本当は望んでいない。

だけど時間は待ってはくれない。


それから一月後、モトさんは苦しむことなく空へと旅立った。

眠るように天に召された父親の手にそっと触れた手が震えてる。

「親父

 ……とう、さん」

『お前ら、よーく聞けよ!

 今日からここがお前らの家だ』

『ビクついてんなよ、何にもしねえよ』

出雲と絢の頭を、優しく撫でてくれた大きな手。

『ジュン、泣いてお前が居なくて寂しい
 ってこと存分にそいつに教えてやれ

 おまえは愛されてたんだぞ』
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