深海魚Lover
「えっ、これはですね
 
 時間が無くて……」

「そう」

うそ、本当は下ろしてみたの。

『髪、ほどけば?』

いつかの京次さんの言葉。

でも、髪が頬にかかるのはやっぱり嫌でハーフアップっていう髪型に挑戦してみたんだけど、おかしくないかなぁ?

何度と髪に触れる私に届く声。

「髪、似合ってるぜ」

その言葉がとっても嬉しくて、明日から私の定番スタイルになりそう。


店内は、冷房が丁度良い効き具合。

席につくなり京次さんは、両手を高く上げて背伸びをしてみせた。

そして今度は洋服の胸元を抓んでパタパタと風を送りながら言う。

「まだまだ、葉月とは言えないなぁ」

「葉月ですか!
  
 葉月って、8月のこと?」

「ああそう、季語だと秋を表す」

「えっ、夏なのに秋?」

「紅葉した葉が落ちる月

 葉月は、旧暦の8月を指す呼び名で
 新暦では9月以降の事を言う」

「旧暦に新暦……ですか?」
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