深海魚Lover
「あの時は楼(ロウ)の帰りを奴が
 見誤ったからで、今とでは事情が……」

「ロウとか言う男がどういう奴が
 俺は知らねえが、そいつが
 四奈川につくならまとめて遣るまで」

「ロウを見くびらない方がいい

 奴にはあの親父だって手を焼いていた

 どうか気をつけてください」

「ああ

 兄貴、話はそれだけか
 だったら俺は行くわ」

「カシラ」

「何度言われても俺は親父が死ぬまで
 ソコに納まる気はねえよ

 ツル、何してる、行くぞ」

「はい」

出雲が店の重い扉を開き外へ出ようとしたその時、お客を見送り終えた女が店内に入って来た。

すれ違いざま、女の手が出雲の腕に触れる。

立ち止まる、出雲。

「殿方そんなに急いでどちらへ
 今夜、一杯付き合って頂けません?」

「悪い、俺は酒は飲まない主義でね」

「あらっ、飲めないの間違いじゃなくて?」

言い当てられた出雲は口元をニヤリとさせた後、女を見つめて言う。
< 80 / 410 >

この作品をシェア

pagetop