僕は君の名前を呼ぶ
「…ごめん、俺の口からは言えない」
一瞬、夏樹だからこそ言うべきなんじゃないかって思った。
でも夏樹にだから言えないんだ。
橘の気持ちが夏樹に向いているかはわからないけど、きっと橘はそれは望んでいない。
「そっか…」
しつこく追及されると思っていたが、夏樹がこれ以上俺に聞いてくることはなかった。
「俺、一応彼氏だったのになー…。俺が知らなくて、ただの友達の海斗は知ってるなんて納得いかねぇ」
喉の奥から絞り出すようなか弱い声だった。
いつかの橘の言葉がよみがえった。
──『ただの友達なわけない』
彼氏の夏樹が知らない、彼女の重大な秘密を知る俺。
俺は一体、
橘の何なんだ?
─────
──