僕は君の名前を呼ぶ
完成したばかりの投影機のスイッチを入れると、教室は一瞬でプラネタリウムになった。
「すげー…!」
高校生が作ったものとは思えないくらい本格的な星空が目の前に広がった。
全然どれがどの星座だとか、星の名前とかはわからないけどはっきりわかるのがひとつ。
「…北斗七星」
俺の名前の由来のひとつ。
北を示し続ける北極星を探すときの目印となる北斗七星。
海のような大きな心で周りの人を包み、誰かの道しるべとなれるようにと両親がつけてくれた名前。
…橘に、このこと話してやりたかったな。
俺はそのへんに乱雑に転がっていた工具箱の中からキリを取りだし、投影機のスイッチを切った。
ケータイのかすかな明かりを頼りに、投影機の中のフィルムにキリで勝手にひとつの穴を空けた。
北斗七星のアルファ星──つまり、一番明るい星のドゥーベの隣に実在しない星を作った。