僕は君の名前を呼ぶ
【彩花 SIDE】
夏のあの夜以来、“ギクシャク”という言葉が似合いすぎるほどギクシャクしてしまったわたしたちの関係。
それは周りにも波及して、9月とは思えないくらいじめじめと嫌な空気が充満していた。
…青木との距離がグッと近づいたのは、湿気が多い6月だったっけ。
実は、わたしは何に腹を立てているのかわかっていないの。
手を離されたって、何も傷つくことないじゃない。
青木が手を握っていてくれたのは、青木の優しさであって深い意味はない。
夏樹くんが現れたとき、本当にびっくりした。
でも、幸せだったあの2年間の甘い気持ちが再燃することはなかった。
あのときは夏樹くんを見るだけで満たされて、目が合えばこのまま燃えてしまうんじゃないかってくらい胸が焦がれた。