僕は君の名前を呼ぶ


「うまい」


幼い頃から朝食はだいたい和食である俺を気遣ってか、彩花は毎朝和食を作ってくれた。


今日は、なめこの味噌汁。それから俺が大好きな甘い卵焼き。


「海斗がおいしいって言ってくれると嬉しいなあ」


「言うに決まってるだろ。うまいんだから」




おいしい朝食をふたりで囲み、笑いあう。


それが、俺の幸せ。


ありふれた光景だろうけど、俺にとっては違うんだ。


だからこそ、それが幸せ。


きっと、この想いは彩花にも伝わっているはず。


いつまでも、こんな幸せが続けばいいのにと思う反面、続けばこれを幸せと思えなくなってしまうのかと思うと怖い。


なんて、乙女チックな考え、彩花が聞いたら何て言うかな。


あきれるかな。


「幸せだってことに、かわりないじゃない」って言うかな。


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