僕は君の名前を呼ぶ
細工があったとしても、橘と隣になれたから万々歳だ。
「青木っ!」
友達との会話が終わったのか、いきなり橘がくるりとこちらを向いてきた。
橘が長い茶色の髪の毛で揺らした風に乗って、甘い香りが流れてきた。
梅雨のじめっとした空気をガラッと替えてしまいそうな、そんな香り。
「これからしばらくの間、よろしく」
そう言って、右手を差し出してきた。
握手ってことか。
「こちらこそ、よろしくな」