[完]Dear…~愛のうた~
「……っ……」

杏奈は拳を握り締めてその場に崩れ落ちた。

「杏奈……」

私は急いで杏奈を支える。

「っ……っ……」

杏奈は悔しそうに息を殺して泣く。

綺麗な顔が益々歪んで行く。

「杏奈……ごめん……」

私はギュッと杏奈を抱きしめる。

「っ……なんで謝るの?」
「私……何も出来ない……自分が凄い悔しいよ……」

私も思わず泣いてしまう。

「そんなことないよ……むしろありがとう……悪いのはあいつだから……」

あいつ……私達のマネージャーは私達がデビュー当時からのマネージャー。

私のお父さんくらいの年齢で頼りだなーって思ってた……。

だけど……そんなの表の顔。

私達の前になると急変していつも暴力ばかり振るってくる。

暴力だけじゃない。

私達は今普通に売れている歌手だが、その宣伝や何かも全てあいつが行っている。

しかもその宣伝には何か裏があることは私達は知っている。

それに耐えきれなくて私達は社長にマネージャーを代えて欲しいと頼んだが、あいつは表面がいいから社長のお気に入り。

そんな私達の要望なんて聞いてくれるはずがないんだ……。

私達はただあいつや関係者の前でいいこにしているだけ。

たまにさっきみたいなことを言うとすぐ殴られる。

きっとさっきはライブ前だから何もしなかったけど……。

私達はただあいつに怯えてるだけ……

私達は闇の世界にいる人形にしかすぎないんだ……。


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