starting over
「まさかこんなに早く使うことになるとは…」

アパートは、早めに職場を出たほのによって、灯りがついていた。ほっぺたをふくらませて、両肘をついて、不機嫌そうにおかえりを言われた。

「ごめん。」
「まあ…千葉くんだから、そうそう話を広めたりはないだろうけど。」

もういいんじゃないの、オープンにしたって問題ないんじゃ、と、喉元まで出かかった。

「私、嫌なんです。」
「何が?」
「正樹さんの評価が下がるのが。」

よく意味が分からなかった。

「一年目で、色恋にうつつをぬかして、ってことより、一年目の先生たぶらかしてとか、正樹さんが批判されるのが嫌だから、オープンにしたくなかったんです。」

ほの…

「そんなことにはならないと思うけどな。」

ふくれっつらのほのの両手を、ほっぺたから離して、ぎゅっと握った。

「むしろ…この手をずっとつなげる口実がほしい。」

ほのは、少しうつむいて、しばらく考えていた。

「そう言ってもらえて、嬉しいけど…」
「けど?」

また少し考えて、言葉を続けた。

「まだ時間がほしいです。」

ケチ…というか、慎重なんだな…

「でも。」
「でも?」
「学校の外なら、いくらでも。」

照れながら答えたほのは、いつもより3割り増しでかわいかった。

「ホントは、ずっとずっとつないでいたいけど。」
「ガサガサじゃないですか?本に油とられてるから。」
「でも、仕事終わったらちゃんとケアしてる。」

仕事のあとの手は、誰もしらない手をしてることを、俺は知っている。

「…照れますね。」
「そうかな?」
「今日の失敗は明日以降、うっかりしないよう気を付けてくださいね。」
「もちろん。」

そういうと、ほのは立ち上がって俺に抱きついてきた。

「お腹すきました。」

手をつないで、どこいこうか?この手をずっとずっと、離さない。
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