後悔なんて、ひと欠片もない
悠子は午後から大学に行くから、長居するつもりはなかった。
席に着くなり、悠子は持っていた大きな銀色のスーツケースをゴロゴロと私の座る席のほうに移動させた。
「ありがとう」
私は、にっこりとする。
「どういたしまして」
悠子もにっこりとする。
「従兄弟のお古だから、ボロボロだけど、鍵は壊れてないよ。
場所取って邪魔だったから、貰ってくれる人がいて良かったって喜んでたよ」
「うん。上々だよ」
私は、運ばれていたアイスティをストローでちゅっと啜った。
「それにしてもね。
休学して、ニューヨークのアートスクールに急に行く決心するなんて…大丈夫なの?しおん、英語喋れるの?」
思いつめたように眼鏡の下の眉間に皺を寄せる悠子に私は、またにっこりしてみせる。
「大丈夫だよ。
日本人もたくさんいるアートスクールなんだ。
寮もあるし、半年間だけだからあっという間さ」
「そっか。日本人たくさんいるんだ。
それは良かったあ~それにしてもさ、
しおんって時々、すごく大胆なことするよね!」
「そうお?」
笑顔を作りながらも、私は上の空で返事した。