後悔なんて、ひと欠片もない
……そろそろだな、と考えていた。


「でもさ、向こうに行っても身体だけは気を付けてよ…
あと、アブナイ人にも気を付けて。
出発の日は、成田まで私、見送りに行くからね!」


悠子は、テーブルに肘を付き、両手で自分の頬を包み込むようにして言った。


「ありがとう…」



つくづく優しい子だな…と思う。

私の事情、全部知ってて知らんぷりしてくれてる。


悠子なら、いつか誠実な人に出逢えるだろう……


熱いものが喉からこみ上げて来て、なぜか私は、涙が出そうになった。



街の雑踏に視線を移す。


月曜日のスクランブル交差点。
たくさんの人が信号待ちをしていた。



歩道の向こう側に、見覚えのある長身の男が立っている。


黒いトレーニングウェア。

信号が青になり、少しがに股気味にこちらに歩いてくる。




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