溺愛御曹司に囚われて
先生は私を車に乗せて、そのまま自分のマンションへ直行した。
私も疲れていたし、外食をする気分にはなれなかったのでありがたい。
そもそも、今日も私には帰る場所がないのだ。
高瀬と住むあの部屋に戻るわけにはいかないし、二日連続で実衣子のところにお世話になるのも少し心苦しい。
そうでなくても、彼女には心配をかけているのに。
ひとり暮らしの男の人の家に泊めてもらうのはどうかと思ったけれど、他に行く当てもなくては仕方がない。
彼は元恋人だし、今日は緊急事態だから目をつぶろう。
辺りはすっかり日も暮れて、人通りはほとんどなかった。
長くこの街に住んでいるけど、見覚えのない街並みた。
大きなマンションの六階に、先生の住む部屋がある。
なんだか緊張してしまう。
高校生の頃は、近づきたくて堪らなかった人の部屋だ。
部屋は二部屋あって、それぞれリビングと寝室として使っているみたい。
広々としたキッチンはあまり使っていないのか、不自然なくらいにに片付いている。
少しお腹は減っていたけど、とりあえずリビングのソファに座って休憩することにした。
ひと段落つくと、隣に腰を下ろした先生がおもむろに切り出す。
「小夜、俺もあの記事は見たよ。結構話題になったし。でも今日のあいつの様子からして、なにか事情があるようにも思える」
先生の言葉に、まだ少し胸が痛む。
だけどあの記事を読んだ人の中に、本当の高瀬と私を知っている人もいるんだと思うと少しだけ気が楽になった。
「それでももしあいつがお前を苦しめているなら、俺がこのまま連れ去ってもいい。今なら、ちゃんとお前をどこへでも連れていってやれる」
その言葉に私は目を閉じた。
あの頃の私を、胸の中にそっと呼び起こす。
先生に感じた燃えるような恋心は、今も私の中でくすぶっているのだろうか。
今ならきっと、私と先生の恋は許される。
これは、あの頃の私が喉から手が出るほどに焦がれた最高の誘惑だ。