溺愛御曹司に囚われて

先生を求めてもいいのだ。

今の私にはそれができる。
本当に、それを望んでいるのなら。


「先生、私、わからないの」


自分がどうしたいのかがわからない。

今まで、そのことを考えるのをずっと放棄していた。
今あるものに満足しなければいけないと言い聞かせていた。

だけどそれだけでは前に進めないことに、ようやく気づいたのだ。
私の時間は、高校生のとき、あの人魚の岬に置き去りにしてきてしまった。


「先生のことが大好きだった。でも今は、高瀬を失いたくない。けど、それが恋かはわからないの」

「ふーん」

「先生への気持ちとは、全然違うの」


私がそう言うと、彼は考え込むように黙ってしまった。

私の高瀬への気持ちが、全部恋心だったらいいのに。
そうしたら、私は彼だけを求めればいい。
もう二度失わないように、ちゃんとその手を握っていればいい。

どっちにしろ、もう元の関係には戻れないのだから、その結果彼が離れていってしまったとしても仕方のないことなのかもしれない。

ふと、先生の手が肩に触れた。
そちらに視線を向ければ、先生は焦げ茶色の瞳から表情をなくし、まっすぐに私を見ていた。


「そんなにわかんないなら、試せばいいさ」

「え?」


驚くほど冷たく響いた先生の声に耳を疑い、その隙に肩をポンと押された。
背中がソファに沈む。


「せ、先生? なにして……」


彼は感情のない目で私を見下ろしている。
起き上がろうとしたけれど、脚の上を跨がれてそれも許されなかった。

彼とは何度も抱き合ったけれど、初めて先生を怖いと感じる。

身体を起こそうと身をよじる私の腕を、先生の手が掴んでソファに押し付けた。
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