【完】切ないよ、仇野君
イケメン君は…………それはもう穏やかに、綿毛が周りに舞っているんじゃないかというくらいに、柔らかく笑ったのだ。


大抵気まずそうにされることばかりなのに、そんな顔をされるのは初めてだし、彼が何を考えているのか全く分からない。


困惑して息苦しくなった私に、その笑顔を向けたまま、イケメン君が薄い唇を動かした。


「はは、君げな俺から見たらチビん部類たい」


『チビ』なんて、小学校三年生以来に言われた。どうリアクションを取っていいか、返す言葉が見当たらない。


「っていうか……多分なんやけどね、俺からすれば、この学校ん人は皆チビかもしれん」


何も言わない私に対し、再度言葉を発したイケメン君は、屈んでいた体をすっと伸ばし、立ち上がった。
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