【完】切ないよ、仇野君



彼の顔は、身長175センチの私の頭上の遥か上にちょこん、と浮かんでいた。


190センチ……どころじゃない。2メートル、多分、いや、絶対に2メートルはあるだろう。


その立ち上がった姿にピンと来る。


同級生のバスケ部員に、一際大きな男子がいるということを。


男子バスケ部は、去年初めてインターハイ本選出場したうえ、ベスト4の成績を残し、秋の国体にも数人選出され、冬の大会でもベスト4に輝いた、この学校では有名で、誰もが注目している部活。


大きな人が多くいるそのバスケ部で、一番大きな男の子。


噂で聞いたことがある。優しくて、穏やかで、女子人気も高いんだって。


「ね?君は、俺から見れば小さかやろう?」


そう言って笑った彼に、どん底に落ちてる途中の私の足が、地面へと降り立った。
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