【完】切ないよ、仇野君
「……まさか同じクラスん子やとは。ビックリした。宜しく、彩月さん」
仇野泰河(あだしの たいが)君。
その穏やかなイケメンビッグマンの彼は、私の新しいクラスメイトだった。
私が泣くほど体調が悪いと思っている仇野君を『大丈夫だから』となんとか説き伏せ、同じ二年D組だということが判明して、何故か一緒に教室まで登校した。
周りの生徒からの目線が痛い。なんせ、大きな男女の組み合わせだから、兎に角目立つ。
その視線に俯く私と、反してニコニコと何一つ顔色を変えない仇野君は、同じ長身でも光と影だと思う。
その視線をやり過ごし、何とか教室に辿り着くと、その空間にいる篠田君に、私の気持ちは更に翳る。
仇野君は、そんな私を見て、背中をぽん、と優しく叩いた。
「詳しく事情は分からんばってん、彩月さんは心が痛かったったい」
その声の優しさに、私は教室にも関わらず、再び目頭が熱くなった。