グラッドアイ
もし俺が相手なら、彼女の目にはどんな風に映るのか、純粋に知りたいと思った。

社長は10秒ほど考えた後、美知佳さん自身のメールアドレスとケータイ番号を、俺にこっそり教えてくれた。

「君じゃ無理だとは思うけど」なんて憐みの微笑み付きで。


深く嵌(はま)ったのは俺の方。

今では彼女の全てが、俺の中にインプットされている。

死にそうなほど疲れていても、俺を見た瞬間嬉しそうに微笑む顔も、俺の腕の中で微睡む姿も。

彼女を知るたびに、愛しいと思う気持ちが膨らんでいく。

いつも、触れたくて堪らない。


水の代わりに飲んでいるビールの所為か、気分はすでに暇を持て余した忠犬ハチ公。

彼女からの連絡を、尻尾をパタパタ振って待っている。


更にドラマが2話分進み、6本目の缶ビールを手にしたところで、俺の部屋のインターホンが鳴った。


「遅いのにごめんね。来ちゃった」

はにかむ様に微笑む彼女を、ふわりと抱き締める。

「あれ?ハル、飲んでたの。めずらしい」

「う~ん」

こんな風に抱き締めて、しっくり来る女を他には知らない。

俺は美知佳さんの手を取って、リビングへ連れていく。

久しぶりのアルコールで、俺の体は少し気怠い。
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