グラッドアイ
彼女はさっきまで俺が寝転んでいたムートンラグに、ペタリと座り込んだ。

「あっ、このドラマ見てたの?」

「佐竹さんに渡された宿題。自分の見るのってさ、ナルシストっぽくて嫌い」

「そう?でも、このドラマ面白いよ。亜弥葉ちゃんもすっかり女優さんぽくなってるし」

私も録画して必ず見てるよ、とうれしいことを言ってくれるけれど、そこは敢えてスルーして、甘えてみたくなる。

「え~褒めるところ、そこ?」

「何て言って欲しいのよ」

「嫌な男に見えるとか、悪い男に見えるとか?」

隣りに寝転ぶ俺の頭を、美知佳さんはいつものように優しい手つきで撫でる。

「嫌な男って言うより、危険な男に見えたけど」

彼女の指が俺の頬を突くので、その指を絡め取り軽く口付ける。

「……美知佳さん、今日楽しかった?」

「そうねぇ、久しぶりに会ったから。皆、すっかり落ち着いた大人になってた。気が付いたら30代だもんね」

「美知佳さんも大人でしょ」

「フフ、どうかな。私、好きなことしかしていないし」

俺は美知佳さんの膝を枕にした。

彼女に良く似合うミッドナイトブルーのワンピースは、生地がサラサラしていて気持ち良い。

でも俺が気になるのは、その下からチラリと見えるストッキング越しの艶めかしい腿。

その腿をツツッと指でなぞった途端、美知佳さんに頭をぺしっと叩かれた。
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